ーピアノの音色-
ー目次ー
-Lektion1- ートバイアス・マテイ『ピアノ演奏の根本原理』ー
-Lektion2- ー音が出る場所ー
-Lektion3- ー基本の考え方ー
-Lektion4- ー手首ー意外と厄介なこの問題ー
-Lektion5- ーツェルニ―の音楽言語ー
-Lektion6- ーアーティキレイションを見てみるー
-Lektion7- ーLektion6における手の形ー
-Lektion8- ーハイドンから見た古典派ー

ーLektion3ー ー基本の考え方ー
さて、Lektion2でも使った写真をもう一度。もう少し詳しくAの写真を分析してみましょう。(左から、A,B,C、となっています)この写真の指は鍵盤に対して何の力も加えていない状態です。ここからは多くの事がわかります。
なぜ私が「鍵盤に対して」と書いているかというと、鍵盤に対しては力が働いていないけれど、指に対してはすでに力が加わっているからです。これを文章で説明しようとするとなかなか難しいのですが、細かく書きますので、何度か読み直していただけると嬉しいです。
Aの写真では鍵盤に対する力はプラスマイナス0だとします。すべてのモノに等しくかかっている重力、そして指や手、腕自体の重さ、これらの力は鍵盤に対して下方向に力を加えているはずなのに、鍵盤は下に動いていません。ということはこの重さを相殺して鍵盤に対する力を0にする力が働いているのは間違いないでしょう。意識していなくてもこれはピアノを弾いている人であればすべての人が多かれ少なかれできているのは確かですが、腕の支え、手の支え、指自体の支えを感じてみてください。構えた後で、手首をゆるめたり、腕をゆるめたりしたら、自然と指は鍵盤に力がかかり、鍵盤が動き出します。
音色を作り出す細かい作業をするのであれば、一度でもいいので、今私はこういう力が加わって、こういう力を使っている、そんな風に大ざっぱにでも認識しておくことは重要です。なにも細かく今私は3グラムの重さで弾いた、などと言うのは求めていません。ただ、自分がどういう音が欲しいのかを考えるのであれば、どういう部分に力が加わっているかを認識するのが大事なのではないでしょうか?
ピアノを弾くのに理論はいらない!気持ちだー!っというのは実際問題としてどうなんだろう、と私は思っています。そう思わせてくれたのは、私の敬愛する伴奏者であり、師でもあるルッツ先生が私にあるときこう言ったからです「君が怒っても音が怒っていない」よっぽどしかめっ面で弾いていたのか、それはさておき、この一言は今でも忘れません。
今まで書いてきた事は音色を作る本当に最初のステップです。タッチに関する様々なやり方はここから何方向にも広がっていくし、音色を作るのに必要なのはもちろんタッチだけではありません。そこには楽譜の解釈、例えば、レガート、スタッカート、アクセントなどの、アーティキレイションの解釈や、弾く曲の性格、音の強さ、弱さといった音の性格、ペダルの使い方、そんなことまで色々と考えていかなければなりません。私は自分が勉強した曲を少しずつここに提示していき、私はどういう風に弾いているのかを書いていきたいと思います。私はドイツリートが専門なので、ソロの曲はここでは書くことはあるかもしれませんがまれだと思われます。
Lektion4では少し脇道にそれて、手首の問題を考えたいと思います。
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