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   〜長い道のりのはてに・・・〜
      
様々な視点からの音楽



ー目次―


ー遠い昔からー
ー2人から・先生という存在ー
ーパブロ・カザルスというチェロ奏者ー
ー馬頭琴演奏会から!−

ーCDを聞くという事についてー
ー音楽は進歩するのか?という疑問についてー
ー『ラ』は果たして『ラ』なのかー
ー留学・ウィーンに来てからー
ーウィーンの他の学校・大学のシステムー
ー大学の授業ー
ーグーテンベルクが音楽に与えた影響・日本語から見た音楽ー
ーグーテンベルクが音楽に与えた影響・印刷文化ー

ーリズムという言葉ー
ー解釈についてー
ー先生と言う存在ー




ーパブロ・カザルスというチェロ奏者ー


 皆さんはこのパブロ・カザルス(以下カザルスで通す事をお許しください)という人物に心当たりはあるでしょうか?
私は自分の音楽人生において、CDでしか聞いたことがないものの、とてつもなく影響を受けた2人の人物がいます。その1人がカザルスというチェロ奏者です。

 確か私が高校生だった頃、静岡のある楽器店で、なぜか良くわからないのだけれど、パブロ・カザルス、ジョージ・セル、チェコフィルという組み合わせのCDを見つけ、手に取りました。おそらく、チェコフィルがすごい、というのが何気なく頭にあって、そのCDを買ったんだと思います。



 そうして、静岡から自分の実家に帰るまでに、CDを聞いていました。
中身は、ドヴォルジャーク(おそらく学校の授業で聞いたことあると思います、新世界とかが有名です)作曲のチェロ協奏曲。最初は何気なく聞いていました。
1分半ぐらい聞いて、おかしいな、チェロが出てこないと思っていたわけですが・・・
それでも初めてチェロを聞くと言うので、とてもわくわくして待っていたわけです。
チェロが出てきた瞬間、それはもう言葉では言い尽くせない感動を覚えたのを私は多分忘れようと思っても忘れられないと思っています。
私は両親にチェロを習わせてくださいとお願いしたのを今でも覚えています。全然上達しませんでしたが・・・




 カザルスは私にCDを通してですが色々な事を教えてくださいました。音程、音楽の作り方、伴奏のやり方、CDを聞いた当時においては、音楽の素晴らしさというものしか教われませんでしたが。時がたつにつれて、こういうところがすごいんだな、っと段々と気づいていけるようになりました。


 最近読んだ本にカザルスの対話というものがあって、是非お勧めしようと思ってここに取り上げたわけですが、全てにおいてカザルスは誠実だったのだろうと私は思いました。
カザルスはかなり長生きしていたので、実際に亡くなったのは最近(といっても1973年)ですが、生まれたのは1876年というかなり昔の人です、生まれてからすでに100年以上が経っている計算になります。

 この本は、カザルスに色々な事をインタビューするという形で進んでいきます。全部で300ページほどあるのですが、その一つ一つにカザルスがどういう方だったのかをうかがい知れるとても良い本だと思っています。
最初の頃は、幼年時代など、それから、演奏、または演奏家たちについて、最後に自分の亡命、世界平和のことに関して書いてあります。


 この本の最後の亡命からの部分は音楽家でない人にもとても感慨深いものだと思われます。カザルスは、あるきっかけから、公的な演奏会に出演しないことを決めたそうです。
それは7年にも及ぶものでした。復帰を願う手紙、演奏依頼(当時で20万ドルなんていうのもあったようです)もすべて断ったそうです。


 バッハ没後200年にあたる1950年、友人のアレクサンダー・シュナイダーが亡命の土地で音楽祭を開くことをカザルスに提案したそうです。その提案は、カザルスにとって、彼の信念を曲げるものではなかったようで、カザルスも了承しました。そうして生まれたのがプラード音楽祭だそうです。

 7年もの間演奏会をしないと決断したのが、カザルスにとってどういうことだったのか、私には分かりません。でもこの本の1文1文を読んでいるともう、どうしようもない悲しみに襲われます。私はここまでの人間にはなれそうにもないけれど、自分のできる事からはじめようとおもいました。

この時代に、偉大な音楽家だという事はどういうことだったのか、そんな事が垣間見える本でした。是非どうぞ。


次は、ちょっと珍しい馬頭琴についてです。

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